研究紹介

①芋焼酎の特徴的な香気成分の同定と生成機構

芋焼酎は個性的で独特な風味を有しています。それに関与する香気成分について、ガスクロマト質量分析計を活用して成分の同定や生成機構を明らかにすることを目的としています。

  • 異なる黒麴菌を用いた本格焼酎の酒質の多様化、白石洋平,原口愛美,村田梨恵,久遼馬,奥津果優,吉崎由美子,二神泰基,玉置尚徳,和久豊,髙峯和則、日本醸造協会誌、113、757-765 (2018)
  • 芋焼酎の発酵および酒質に及ぼす二次醪pHの影響、髙峯和則,小島舞,奥津果優, 二神泰基, 玉置尚徳, 吉﨑由美子、日本醸造協会誌、113、375-382 (2018)
  • 芋焼酎の香気形成に及ぼすアミノ酸の影響、白石洋平, 安藤有加, 奥津果優, 吉﨑由美子, 二神泰基, 玉置尚徳, 和久豊, 髙峯和則、日本醸造協会誌、112、563-568 (2017)
  • 芋焼酎醪へのプロテアーゼ剤添加による揮発成分と官能評価への影響、白石洋平, 安藤有加, 奥津果優, 吉﨑由美子, 二神泰基, 玉置尚徳, 和久豊, 髙峯和則、日本醸造協会誌、112, 517-523 (2017)
  • Characteristic odour compounds in shochu derived from rice koji, Yohei Shiraishi,Yumiko Yoshizaki, Toshifumi Ono, Hiroaki Yamato, Kayu Okutsu, Hisanori Tamaki, Taiki Futagami, Sameshima Yoshihiro, and Kazunori Takamine, J. Inst. Brew., 122, 381-387 (2016)
  • Effects of the cultivation period of sweet potato on the sensory quality of imo-shochu, a Japanese traditional spirit, Kayu Okutsu, Yumiko Yoshizaki, Mai Kojima, Kazuya Yoshitake, Hisanori Tamaki and Kazunori Takamine, J. Inst. Brew., 122, 168-174 (2016)
  • Rice koji reduced body weight gain, fat accumulation, and blood glucose level in high-fat diet-induced obese mice, Yumiko Yoshizaki, Chihiro Kawasaki, Kai-Chun Cheng, Miharu Ushikai, Haruka Amitani, Akihiro Asakawa, Kayu Okutsu, Yoshihiro Sameshima, Kazunori Takamine, Akio Inui, PeerJ, 2e540 (2014)

②黒糖製造工程における黒糖風味の消長

黒糖焼酎は奄美群島でのみ製造が認められた焼酎です。サトウキビの絞り汁を煮詰めてブロック状に整形した黒糖と米麹が原料です。黒糖由来の甘い香りと、米麹由来の濃醇な味わいを有しています。それらを特徴づける成分についてガスクロマト質量分析計を使って検索しています。

  • Effects of liming on the flavor of kokuto-shochu, a spirit made from non-centrifugal sugar, Fumina Iwasaki, Miyuki Sunao, Kayu Okutsu, Yumiko Yoshizaki, Taiki Futagami, Hisanori Tamaki, Kazunori Takamine, Yoshihiro Sameshima, Journal of bioscience and bioengineering, (in press)

③新規焼酎製造方法の開発

焼酎の新たな可能性を探すために、新規原料や製造方法を取り入れた焼酎製造に取り組んでいます。新たな微生物の特性や原料の性質を理解し、将来的に活用できる技術開発を目指しています。

  • プロテアーゼまたは細胞壁分解酵素製剤添加による紅麹焼酎製造法の改良、吉﨑由美子, 奥津果優, 二神泰基, 玉置尚徳, 鮫島吉廣, 髙峯和則、日本醸造協会誌、113、265-272 (2018)
  • Key volatile compounds in red koji-shochu, a Monascus-fermented product, and their formation steps during fermentation, Yen Yen Sally Rahayu, Yumiko Yoshizaki, Keiko Yamaguchi, Kayu Okutsu, Taiki Futagami, Hisanori Tamaki, Yoshihiro Sameshima, and Kazunori Takamine, 224, 398-406 (2017)
  • サツマイモの加熱方法が芋焼酎香気に与える影響、吉﨑由美子、松山晃佑、大庭暁紘、園田舟、奥津果優、玉置尚徳、髙峯和則、日本醸造協会誌、110、349-356 (2015)
  • 韓国伝統的麹「ヌルク」を用いた焼酎製造の可能性、吉﨑由美子,金顯民,奥津果優,池永誠,玉置尚徳, 髙峯和則、日本醸造協会誌、110、170-178 (2015)

④発酵食品・焼酎・焼酎粕の機能性の検索

日本では,中国からの薬食同源思想から着想を得て「医食同源」という思想があります.これは日頃からバランスの取れた美味しい食事を摂ることで病気を予防・治療しようとする考え方ですが,この考え方から近年,予防医学としての日本食に注目が集まっています.またその中でも,日本食で古くから用いられる味噌や醤油などの伝統的な発酵食品に様々な機能性が認められ,改めて日本伝統発酵食品の価値が確認されてきました.私たちは,古来から使われいてる発酵食品のもつ価値の発見を目指し,機能性や高付加価値化を行うための研究を行っています。また焼酎粕は本来発酵産物であり、機能性物質に富んでいる有益物質です。人体に良い影響を与える機能性食品など、飼・肥料以上に高付加価値な物としての有効活用を行うための研究を行っています。

  • Acute effects of traditional Japanese alcohol beverages on blood glucose and polysomnography levels in healthy subjects, Megumi Kido, Akihiro Asakawa, Ken-Ichiro Koyama, Toshio Takaoka, Aya Tajima, Shigeru Takaoka, Yumiko Yoshizaki, Kayu Okutsu, Kazunori Takamine, Yoshihiro Sameshima and Akio Inui, PeerJ, e1853 (2016)
  • Antioxidants in heat-processed koji and the production mechanisms, Kayu Okutsu, Yumiko Yoshizaki, Natsumi Ikeda, Tatsuro Kusano, Fumio Hashimoto, Kazunori Takamine, Food Chemistry, 187, 364-369 (2015) doi:10.1016/j.foodchem.2015.04.004.

⑤日本と中国の伝統的蒸留酒の製造および酒質の比較

日本と中国の蒸留酒について比較をすることで食文化の発展について明らかにすることを目的にしています。日本と中国の伝統的な蒸留酒の製造方法には似ている面と異なる面の両面が存在します。これらの類似性は互いの酒の歴史的つながりを連想させるものであり、一方で相違点からは独自発展の軌跡が確認できると考えています。

  • Manufactural impact of the solid-state saccharification process in rice-flavor baijiu production, Xuan Yin, Yumiko Yoshizaki, Makoto Ikenaga, Xing-Lin Han, Kayu Okutsu, Taiki Futagami, Hisanori Tamaki, Kazunori Takamine, 129、315-321 (2020)

⑥本格芋焼酎フレーバーホイールの開発

これまでに本格芋焼酎の味・香りに関する共通表現はまとめられておらず,焼酎の製造現場や販売において,個人的または小さなコミュニティー(メーカーや販売店等)の表現方法を用いて説明するしかありませんでした。そのため芋焼酎の風味について消費者や製造者,小売業者の間で正確に伝わらないことや,誤解をまねくことが少なくありませんでした。この問題を解決するために,本格芋焼酎の味・香りの共通表現をまとめたフレーバーホイールを開発しています(本格焼酎近未来評議会と共同開発)。