演習林とは?

演習林は、巨大な教室であり、また実験室であるといえます。
鹿児島大学農学部附属演習林の土地は鹿児島大学の93%を占めていて、100年の歴史に支えられた有形無形の財産が蓄積されています。その一方、環境問題や、自然と調和した持続可能な森林資源の維持管理が、私たちに等しく課せられた課題となっています。このような課題に対応した教育・研究が今大学に求められていますが、それを実践的に展開するフィールドがここ演習林です。
本学は、演習林をもつ全国27大学の中で5番目に広い森林を有し、高隈演習林をはじめとして、3カ所のフィールドを管理しています。

演習林の歴史

1909年12月、鹿児島大学の前身である国立鹿児島高等農林学校に、林学教育・研究の場として、高隈演習林と佐多演習林が設置されました。1949年の学制改革を経て、鹿児島大学農学部の附属施設となりました。設立当初は大部分が痩悪な広葉樹林や草地でしたが、国内の木材需要に答えるために人工林の造成が始まりました。木材の価格が高かった時代には、演習林での木材生産は大学の収入に大きく貢献しており、歴史的には大学の資産としての役割も果たしてきました。
 この20~30年の間には、時代の流れとともに、林学教育の縮小、森林の公益的機能の重視、大規模生産、造林事業の縮小などが行われました。一方で、演習林の利用拡大や大学の社会貢献の重要性が問われるようになり、いくつかの新しい試みを行うようになってきています。

写真左:大正3年頃まで使っていた宿舎
写真中央:昭和55年まで使っていた宿舎。写真は南寮。現在は取り壊して多目的広場として利用しています。
写真右:現在の宿舎

高隈演習林

立地

 高隈演習林は、面積3,068.11ha。大隅半島の北部にあり、鹿児島市の対岸、桜島の東方に位置します。錦江湾(姶良カルデラの外壁部分)に沿って、南の高峠(722m)から中央のビシャゴ岳(885m)を経て、南北に尾根が伸びています。この稜線を分水嶺として、東側は串良川の原流域を形成する丘陵地形となり、演習林から流れた水は高隅ダム(大隅湖)に蓄えられ、笠野原台地をうるおしたのちに志布志湾に向かいます。西側および北側は、錦江湾に向かう急傾斜となっています。南側には、ブナの南限地として知られる高隈山森林生物遺伝資源保存林(国有林)があります。演習林の標高は70m~885mで、500m以上の場所が半分を占めています。管理棟(事務所)は演習林の南端、標高542mの位置にあります。

植物・動物

暖帯南部に属し、照葉樹の2次林が大半を占めています。森林のうち人工林は36%あり、大半がスギで、戦前の植林も比較的多い(24%)ことが特徴です。木本は301種類、草本は653種類が記録されています。(昭和43年 迫報告による)ほぼ原生林とみなされる学術参考林(七ッ谷山系)などでは、イタジイ・イスノキ・ウラジロガシ・タブノキ・マテバシイなどの背の高い常緑広葉樹、中層にサザンカ・アオガシ・シキミが多く、低層にアオキ・サツマイナモリ・モミジコウモリなどが姿を表します。桜島のすぐ東側に位置するため、標高の高い場所などでは、かつて草地だったところも多くあります。また哺乳類は少なくとも15種類、鳥類は98種類が確認されています。

気象

年平均気温は14.5℃、年間降水量は3,400mm程度で、霧が多く湿度が高いことが特徴です。台風時の北東~南東の風は強烈で、集中豪雨に見舞われることもしばしばあり、林地の崩壊や樹木の風倒・風折の被害を受けることも多くあります。雪はほとんど降らず、数㎝の積雪が年に1~2回あるかどうかといった程度です。

地質・土壌

地質は、中生代白亜紀の付加体堆積物(泥岩が優勢な四万十層群)が多く分布します。南東の一角には高隅連山から続く新生代の花崗岩があり、南部に第四紀の入戸火砕流(≒シラス)、北部に百引火砕流が堆積し、溶結凝灰岩が分布することが特徴です。そして地表近くには、比較的新しい、桜島からの噴出物を観察することができます。土壌としては、普通または淡色アロフェン質黒ボク土が優勢です。主に火山灰を母材とし、保湿性や浸水性が良く、耕起が容易であることが特徴です。

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学内施設

実験苗畑

林学研究棟から約50mという近距離に位置し、緻密な実験観測を必要とする研究試験に必須の場を提供しており、 林木の育苗、育種、苗害虫の防除など、主に造林学および育種保護学に関する研究教育によく利用されている。 その他実験材料の育成なども行われている。

唐湊林園

農学部の西方2.5kmに位置し、林木育種及び樹芸試験を行うための実験圃場としての役割を果たしている。 林園は学部に近く、実験苗畑と補完しあって、きめ細かな実験観察林として、研究教育に随時活用されている。

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佐多演習林

概況

 本演習林は、前記高隈演習林から南へ直線で約50kmの大隈半島南端、南大隅町に位置し、面積は299haであり、 霧島・屋久国立公園第2種特別地域内にある。

 標高は最高でも212mであるが、東側、西側及び南側一部は海に面し、内陸部は北東方向に3つの尾根が走り演習林ほぼ中央で つながるなど、標高の割には地形が複雑となっている。

基岩は推積岩で、砂岩とシルト岩からなり、土壌は浅い上、硬く乾燥し地味不良である。

 年平均気温19℃、年平均降雨量は1500mm程度で、降霜を見ないところもあるが、季節風が強く台風に見舞われる事も多く、 強く風の影響を受けている。

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桜島溶岩実験地
概況

本実験場は桜島の南西海岸にある溶岩台地で、大正の桜島大爆発により以前は海であったところが溶岩台地となったところである。
この実験場は、超長期的視点から不毛の新生溶岩台地が森林化していく過程を観察していく岩石地であり、 現在は、クロマツ、イタドリ等がまばらに点在する程度の植生が進行中である。
桜島周辺の溶岩台地全域は相当広い面積であるが、自然状態で保存された地域は少なく、 本実験場は学術研究上貴重な試験地である。

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